前回の炭火のつづきです。
買っておいたまいたけを冷凍しておいて、バターと一緒にアルミホイルで包んで焼きました。
「冷凍すると栄養の吸収がよくなる」と聞いていたのですが、調べたら、確かめられていたのは別のことでした。
まいたけを手でさいているところ
📷 包丁は使いません。手でさきます。

まいたけを冷凍しておいた理由

買ってきたまいたけを、その日のうちに冷凍しておきました。前々から「きのこは冷凍したほうがいい」と聞いていたからです。

使ったのは店で買ってきた栽培もののまいたけです。山で採ったものではありません。この記事に出てくる話は、すべてスーパーや直売所で売っている栽培きのこについてのものです。

調べたら「栄養」ではなく「うま味」だった

よく言われるのは、こういう説明です。

冷凍すると、中の水分が氷になって膨らみ、細胞壁を壊す。だから栄養が吸収されやすくなる。

前半は当たっていました。冷凍すると氷の結晶ができて、きのこの組織が傷つきます。これは電子顕微鏡で実際に観察されています(日本食生活学会誌/2006年)。

ただ後半は、調べても実験データが出てきませんでした。「細胞が壊れるから吸収されやすいはず」という仕組みの説明までで、人が食べて実際に吸収量が増えたかを測ったものが見あたりません。

そのかわり、はっきり確かめられていたのはうま味のほうでした。

冷凍してから加熱すると、うま味成分のグアニル酸が、生のまま加熱したときより増える。まいたけを含む6種類のきのこすべてで有意に増えた、という報告があります(日本食生活学会誌/2006年)。別の研究でも、なめこ・えのき・ぶなしめじで同じ傾向が確かめられています(同誌/2015年)。

ただし「必ず何倍になる」とは言えません。増え方はきのこの種類や火の入れ方でずいぶん違いますし、条件によっては生と冷凍でほとんど差が出なかった実験もあります(日本きのこセンター菌蕈研究所研究報告/2019年)。

アルミホイルの上にのせたまいたけ
📷 さいたまいたけをアルミホイルへ。

もうひとつ意外だったこと

「うま味がにじみ出てくる」のだと思っていました。ちがいました。

生のきのこには、グアニル酸はほとんど入っていません。冷凍でこわれた細胞の中で、加熱の最初から酵素が働いて、うま味がそこで新しく作られるのだそうです。もともとあったものが漏れ出すのではなく、加熱中に生まれている。

だから「冷凍しただけ」では増えません。冷凍したうえで加熱して、はじめて効いてきます。

凍ったまま焼く

解凍せずに、凍ったまま火にかけます。とけると水が出てぐずぐずになって、包むのも焼くのも扱いにくくなるからです。

とけかけたものを台所に置きっぱなしにしないこと。うっかりとけてしまったら冷蔵庫に入れて、その日のうちに火を通して食べきります。一度とけたものを冷凍庫に戻すのはやめたほうがいいです。

まいたけにチューブのバターを絞っているところ
📷 チューブのバター。切らなくていいので楽です。

バターを入れて、二重に包む

まいたけの上にバターをひとしぼり。今回はチューブのものを使いました。

包むときは、すき間ができないようにフチを2回以上折ります。アルミホイルは水蒸気も酸素もほとんど通さないので、しっかり閉じると中で蒸し焼きの状態になります。すき間があると蒸気が抜けてしまいます。

そのうえで、もう一枚重ねて二重にしました。炭火にのせると一枚では破れることがあるからです。

アルミホイルで包んだまいたけ
📷 二重にして、破れないようにしておきます。

網の端、直火の当たらないところに置く

炭がおきたら、網の端のほうに置きました。真ん中の炭が赤いところに直接のせると、下だけ焦げます。

網の端に置いたホイル包み
📷 手前は秋鮭。ホイル包みは奥の端のほうへ。
炭が赤くなった七輪
📷 炭はまだ元気でした。

ここでひとつ気をつけていることがあります。アルミホイルは酸と塩分に弱くて、レモンや味噌、醤油などに長時間ふれたままにすると溶け出すことがあります。国の家庭用品品質表示のルールでも、アルミはくには「酸分及び塩分によって変色や浸食が生じることがある」と表示するよう決められています。

ふつうに焼いて食べるぶんには口に入る量はごくわずかで、国の定めた摂取の目安に比べればはるかに少ない量です。ただ、包んだまま長時間置いておくのはやめています。だから醤油は焼くときには入れず、食べる直前にかけました。

気づいたら真っ暗だった

9月に入ると、日が落ちるのが早いです。ランタンをつけても手元しか見えません。

ランタンの明かりだけの庭
📷 これ以上外にいても、何を食べているか分かりません。

ホイル包みは家の中へ持ち込みました。晩酌の肴です。

開けたら、バターが全部溶けていた

ホイルを開けたところ
📷 開けた瞬間。バターの匂いが立ちます。

包みを開けると、バターが全部溶けて、まいたけの汁と混ざっていました。

ここに追いバターを足して、醤油をひとまわし。

醤油をかけているところ
📷 醤油は焼くときではなく、最後にかけます。
バター醤油のまいたけホイル焼き
📷 これで完成。バターと醤油が混ざって、まいたけによく絡みます。

まいたけの歯ごたえがちゃんと残っていました。冷凍したらへたるかと思っていましたが、そうでもない。

もっとも、これはきのこによって違うようです。なめこは冷凍したほうが好まれたという実験がある一方で、ぶなしめじは単体で煮ると食感の評価が下がったという報告もあります(日本食生活学会誌/2015年)。かと思えば、炊き込みご飯にすると冷凍のほうが好まれたという別の報告もある(同誌/2006年)。「全部のきのこを冷凍しておけばいい」という単純な話ではなさそうです。

まいたけについて、調べて知ったこと

ついでにいくつか。

洗わなくていい。 市販のまいたけはそのまま使えます。洗うと水っぽくなって、水に溶けるうま味も逃げてしまいます。汚れが気になるときは拭く程度で十分です。

茶碗蒸しには生のまま入れない。 まいたけには卵のたんぱく質を分解する酵素が入っていて、生のまま入れると固まりません。この酵素はけっこう熱に強いので、さっと湯通しした程度だと働きが残ります。確実にしたいときは、フライパンでしっかり炒めるか2〜3分ゆでてから加えるか、蒸し上がった茶碗蒸しの上にあとからのせるのがいいそうです。

煮ると煮汁が黒くなることがある。 まいたけの色素が溶け出すためです。色を出したくない料理には、別に炒めてあとから合わせると防げます。

いま出回っているものは、ほぼ栽培もの。 もともとは秋の山で大きな広葉樹の根元にまれに生える、めったに採れないきのこでした。国内生産量は令和7年で55,280トン、いちばんの産地は新潟県です。

きのこを扱うときに気をつけていること

おわりに

「冷凍すると栄養が吸収されやすくなる」と思って冷凍していました。調べてみたら、そこははっきりしていなくて、確かめられていたのはうま味が増えるほうでした。

結果としては、やっていたことは間違っていなかったわけです。理由がちがっただけで。

バターと醤油だけで、こんなに酒がすすむとは思いませんでした。来年もまた冷凍しておこうと思います。

▶ 前回:秋の味覚を全部炭火で焼いた